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私が今まで書いてきた詩を掲載しています。 無いとは思いますが、無断転載(盗作)、複製等は禁止です。 閲覧者様の暇つぶしになれたら幸いです。

黄昏

「黄昏」
(2009年9月~2012年10月中旬作)

あたしはね
あんたがよちよち歩きの頃から
ずっと あんたを知っていた

「ももたろう」を読み始めて
「シンデレラ」のビデオを見始めて
運動会では四等になって
すきっ歯で三つ編みだった頃の
あの頃のあんたもよく覚えている

小鳥や猫の絵を描いて
あたしに見せるたび
あたしはあんたに
「うまいね」って褒めた
学校で習った童謡や
流行りの歌なんかを歌ったときも
「上手 上手」と、手を叩いたものよ

いつ頃からだろう
あんたが眉根にしわを寄せ
難しいことを考えているような
そんな素振りを見せ始めたのは

一体いつからなのだろう
利いた風な口をきくようになって
スパンコールのようにカラフルな錠剤を
持ち歩くようになったのは

得体のしれない魔物のように
あんたはすっかり変わってしまった
目の下のくまは日に日に濃くなって
肌は病的に青白い
あばら骨が見えるほど
平たくなった あんたの肢体

何気なくあんたの横顔を見ていたら
ふと あんたと目が合った
あんたは口元を歪めて
意味深な笑みを浮かべていた
あたしは何故かぎくりとして
そっぽを向いて
知らんぷりを決めこんだ

いつ頃からだろう
あんたのことが
まるで分からなくなってしまったのだ

あたしと二人でジャンケンをして
階段を駆けのぼる小さな子ども
あんただけ勝ち続けて
あんたの姿がどんどん遠ざかっていく

「パ・イ・ナ・ッ・プ・ル」
「チ・ョ・コ・レ・ー・ト」
「グ・リ・コ」

あたしはまたあんたのそばに
近付くことができるのかな

「ジャンケンポン」の
無邪気な声ばかり
夕焼け空にこだまする
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夕暮れ

「夕暮れ」
(2009年9月~2012年10月中旬作)

暮れゆく空で
雲が赤々と燃えている
今日という日を弔うひととき

ミレーの描いた「晩鐘」のように
頭を垂れて
手を合わせよう

今日という日に
祈りをこめて

終焉を奏でるオーケストラのように
日没は壮大な幕引きを始める
鳥たちに寝支度を促し
人々の肩に労いとぬくもりを残す
夕焼けに混じる夜風の匂い

今日という日の
静かなフィナーレ

ごちそう

「ごちそう」
(2020年12月21日作)
 
キミはボクの足を食べた
と、ニワトリが言いました
キミはボクの腹を食べた
と、ブタが言いました
キミはボクの舌を食べた
と、ウシが言いました
 
「おいしかったかい?」
「あますところなく食べたかい?」
 
ニワトリやブタやウシが
ワタシの胃袋の中から問いかけてきます
 
夕飯に並んだサカナが骨だけになっても
じっとこちらを見つめてきます
 
「おいしかったかい?」
「あますところなく食べたかい?」
 
ワタシは小さく頷くだけで
何も言えませんでした
何も言えるわけがありません
数多の命を奪いながら
生き長らえているワタシですから
 
「いただきます」と「ごちそうさまでした」を
丁寧に伝えるだけで
それ以上 何も言えませんでした

窓辺の少女

「窓辺の少女」
(2020年4月28日作)
 
成田空港の大きな窓から
外を眺める少女が一人
褐色の肌に翡翠色の瞳
黒いウェーブの長い髪
彼女は日本語をよく知らない
遠い異国の地の少女
彼女は愛しいボーイフレンドを
ずっとずっと待っている
 
少女のことを知っているのは
情報通の清掃員
今日もあくせくと働きながら
昼休みは他の清掃員と一緒に
噂話に花を咲かせる
 
「あの娘 まだ自分の国に帰らないのかね
 口の上手い少年にコロっとだまされて
 『またこの空港で会おう』
 って言葉を真に受けちゃってさ
 少年は地元に帰ったきりで
 もう二度と会えはしないのに
 毎日毎日この空港に来るんだから」
 
大きな飛行機が次から次に飛び立つのを
少女は黙って見つめている
今一度あの少年に
会えることを信じて
まばたきすることさえ惜しみながら
その目は今日もあの少年を
探している

母星

「母星」
(2019年7月~2020年2月頃作)
 
小さな子どもが
面白半分で人差し指で障子を突き破る
破れた障子の隙間から
子どもは何を覗き見たのだろう?
 
大勢の大人たちは
工場を乱立させ
二酸化炭素でオゾン層を突き破る
大災害をもたらす天候
消えゆく北極と南極
酸性雨で溶けゆく偉人の像
汚染された風と土と海
ちっぽけで身勝手な人間は
今更「神様」と叫び救いを求める
破れたオゾン層の隙間から
大人は何を垣間見たのだろう?
 
そして今日も大空は
雲ひとつない快晴
透き通った青
 
目にしみるほど美しい
私たちの青
ただひとつの青