体温
「体温」(2005年作・2007年リメイク)
小雨の粒を髪に飾り
車のドアを片手で開けた
埃の湿っぽい匂いが
猛烈なクーラーでかきたてられる
私は父を抱えて座る
幼い私を父が抱えてくれたときのように
二人で助手席に座る
膝の上の箱の中で
車体とともに揺れる骨壺
壺が重いのか
骨が重いのか
重くてとても軽い箱
運転席を見やれば
叔父が手際よくハンドルをきっている
指の形とか笑い方とか顔のつくりや声が
どことなく父と似ている
わたしをドライブに連れて行ってくれるのは
いつだってお父さんだったのに
焼いた骨の熱が
膝にまで伝わってくる
まるで体温のようにあたたかい
窓ガラスにかじりついて
通り過ぎていく街を見つめる
のん気に歩いている父を
見つけられるような気がする
まだ この世界のどこかで
生きている気がする
膝に伝わる熱は
まるで
体温のようにあたたかい
幼い私をお父さんが
抱えてくれたときのように
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