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私が今まで書いてきた詩を掲載しています。 無いとは思いますが、無断転載(盗作)、複製等は禁止です。 閲覧者様の暇つぶしになれたら幸いです。

痛み

「痛み」
(2009年9月~2012年10月頃作)
 
子宮内膜症の患者は
戦前は少なかったらしい
医学が今ほど進んでいなかったため
見落とされていた患者もいたのだろうけど
戦前は初婚年齢が低かったということが理由として挙げられる
晩婚化が進み未婚の女性が増えた現代
子宮内膜症の患者は右肩上がりに増加している
 
結婚をしないことで
子どもを持たないことで
女性たちは世間様から
負け犬のレッテルを貼られらり
冷ややかな視線や嘲笑に晒されたり
不当な扱いを受けることが
多々ある
 
それに加え
自らの子宮からさえ
「はやく子どもを産まないと
 不妊症になりますよ」
と せっつかれたりするのだから
やっていられない
 
低用量ピルや鎮痛剤で
身体をなだめて
自虐の笑いやたおやかな態度で
周囲を受け流して
 
下腹部の鈍い痛みを抱えながら
のらりくらりとその場をしのぎ
ふらりふらりと一日一日を歩いていく
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「♀」
(2009年9月~2012年10月頃作)
 
物心がついたころから
女として生きることの窮屈さを
感じ始めていた
男性語を使えばたしなめられ
日頃はかないスカートをはけばからかわれ
社会では「非力」「格下」とさげすまれ
宗教では「聖母」「売女」と誇張され
レディファーストや男尊女卑に翻弄され
太古から
男と女は別物だった
同じ人間でありながらも
 
メイクやドレスやジュエリーで
女を楽しむ者もいる
猫なで声や愛想笑いで
女を役立てる者もいる
そのように したたかに生きていけたら
楽になれるのかもしれない
自分の中にいる女を
いまだ受け入れることができずに
私は今夜も石鹸で泡立てた両手で
ごしごしと豪快に洗顔をする

月夜の酔っぱらい

「月夜の酔っぱらい」
(2009年9月~2012年10月中旬作)

ねぇ お月さま
神サマっていうのはさ
雲の上にいるのかな
それならあんたのところから
神サマの背中が見えているのかな

ねぇ お月さま
俺たち人間っていうのはさ
一人一人が役者さんだ
地球という名のだだっ広い劇場の
狭苦しい生活圏を舞台にして
時に笑い時に涙して
歌ったり踊ったりなんかして
こうやってお月さまを肴にして
酔っぱらったりなんかしてね

ねぇ お月さま
神サマっていうのはさ
どんな顔をして
俺たちの劇を眺めてんだろね

神サマが俺たちをおつくりになられたのなら
日々繰り広げられるこの劇も
神サマがおつくりになったってことになるね

神サマっていうのは
喜劇よりも悲劇がお好きなのかな
涙は人生の香辛料だなんていうけれど
それにしてもちょっと酸っぱすぎやしないかいって
思ってしまう料理の多いこと多いこと
この酒も少々辛いもんだし
神サマの好みっていうものは
俺たち凡人にゃ理解しにくいもんなのかな

ねぇ お月さま
俺はあんたの優しいあかりが好きだ
カンカン照りの太陽はたくまし過ぎて
一緒にいるとくたびれちまう
真っ暗闇の夜空は他人行儀で
ねずみの足音や木の葉がこすれ合う音さえも
寂しく響いて 俺はすくみあがってしまう

ねぇ お月さま
今度 神サマに会ったらさ
俺からの伝言を伝えておいてよ
「今度 一杯飲みましょうよ」って

水葬―オフィーリア―

「水葬―オフィーリア―」
(2009年9月~2012年10月中旬作)

きれいなきれいな花を摘み
王様の冠よりも
美しい花輪を作りあげました
さぁこれを誰に捧げましょうか
――大切なお父様に?
――大好きな恋人に?
ああ 私には選べない
選べるわけがありません

花の赤は血よりも赤く
花の青は悲しみよりも深く
絡め合わせた茎と茎は絆よりも固く
愛をこめた冠を手に私は立ちすくんでいます

あなたのもとへ届けられたらいいのに
可愛らしいおとぎ話のように
小鳥たちがこの冠を
天国へ届けてくれたらいいのに

何かにすがりつくように
私は川辺の古木にしなだれかかり
老婆の腕のような枝先へ
花輪を飾ろうと手を伸ばしました
かよわい枝は重みに耐えきれず
きしんで悲鳴をあげました
私の体は冷たい水面へ落ちていきます

川の上で白いドレスは緩やかに広がり
なすすべもなく花輪もときほぐれていきます
色鮮やかな花たちが
踊るようにくるくると回っています
私の手首やくるぶしをくすぐって
川の水が崩れた花輪をゆらゆらと運んでいきます

きれいなきれいな花を摘み
お妃様のティアラよりも
美しい花輪を作りました
私はこれを誰に捧げたかったのでしょう
今、口ずさむ祈りの歌も
一体誰のために……?

――大切なお父様に
――大好きな恋人に
――それとも私自身のために

ああ 私には分からない
分かることなどできません

微かに響いていた歌声は
やがてせせらぎの中にまぎれて
私は川の底へと
ゆっくりと身を沈めていきます

そしてあとには
ほどけた花輪だけが
水の上をゆらゆらと漂っていました

さくら

「さくら」(2009年8月頃)

ひとひら
ひとひら

細雪のような花弁は散る

ひらひら
ひらひら

蝶のように風にもてあそばれて

時に促されるまま
生き急ぐように咲いて
枯れ朽ちる定めを恐れているのか
美しいまま花は舞っている

ひとひら
ひとひら

過ぎ去る日々を数えるように

ひらひら
ひらひら

地面へ 水面へ

花は踊る
さよならは悲しみではないとでも言うように
花は踊る
死に逝くことさえ楽しむかのように

ひとひら
ひとひら

花は落ちる

ひらひら
ひらひら

花は落ちる

美しいまま花は舞う
美しいまま花は散る

晴れ渡る空の下で
あの鮮やかな風の中で