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私が今まで書いてきた詩を掲載しています。 無いとは思いますが、無断転載(盗作)、複製等は禁止です。 閲覧者様の暇つぶしになれたら幸いです。

ブーケ

「ブーケ」(2003年7月~12月頃作)

空に弧を描いたブーケが
私の胸へとおさまった
美しく着飾ったあなたは
フラワーシャワーの中
幸せに満ちた笑みを向けた

大切な大切なあなた
素晴らしい巡り合いに
私は世界の全てにひれ伏したい

大切な大切なあなた
愛しい人と腕を組み
まばゆいひだまりの中に二人

どうかその笑みが曇ることがないように
私は祈り続けよう

隠しきれない涙を
嬉し泣きと偽って
ごめんなさい

おめでとうと繰り返すのに
悲しみに暮れる私を
許してください

甘い花束に顔をうずめて
わきあがる歓声から一瞬遠ざかる

あなたを
愛していました
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幸福

「幸福」(2003年2月~7月頃作)

ひとつを二人でわけるというだけの
小さな幸せが私を満たす
例えばこんな半分のりんごさえも

おやすみなさい

「おやすみなさい」(2008年9月作)

眠りは
神さまからの最高の贈り物
命あるものへ与えられた
極上のやすらぎ

狩りに疲れたライオンの上に
子どもを産んだ牛の上に
路上で酔いつぶれたサラリーマンの上に
ロッキングチェアを揺らす老婆の上に
せっけんの匂いに包まれた少年少女たちの上に
眠りの星は
やさしく降り積もる

失恋に泣いてメイクを崩した女の上にも
監獄で手紙を読み返す囚人の上にも
天使たちは
眠りの星を
誰にも等しく振りまいていく

まぶたが今日を閉幕する
おやすみなさい
また あした

一日に一度与えられる
神さまからの贈り物

空の彼方

「空の彼方」(2019年11月頃作)
 
幽霊なんていやしない
お盆だなんてまるで意味もない
お坊さんの退屈な読経と
慣れない正座でしびれる両足
「天国・地獄」そんなものない
命がつきれば全ては無にかえるんでしょう?
 
それなのに 無駄なのに
遺された私は空の上にあの世を夢見る
 
名を呼んでも答える声はないのに
抱きしめたくても、その身体はもうないのに
 
それなのに 無駄なのに
遺された私は空の上にあの人を思い描く
 
親戚同士でたわいない会話が交わされ
少し酔った叔父の長い説教が始まり
幼いいとこのかん高い笑い声が響く
たくさんの肉親がいる中
あの人の顔を探してしまう
トイレに行くふりをして宴から立ち去り
独り青空を見上げる
「幽霊でもいいから出てきなさいよ」
私はあの人に怒鳴りつけたい
心がはちきれんばかりに
あの人への言葉であふれかえっている
頬をつたう涙までもが
快晴の空の色に染まっていく
 
こんなときに私は信心深くもないくせに
「神様」とやらにすがりつきたくなる
そして「あの人をかえして」と
ひたすら懇願したくなる
振り乱した髪も崩れたメイクもそのままに
しぼり出すような声で
あの人の名を叫びたくなる

わすれなぐさ

「わすれなぐさ」(2018年7月作)
 
「どちらさまですか?」
と、母は私に問いかける
田園に囲まれた特別養護老人ホームの一室で
私が見舞いに行く度に
母は私に問うのだ
「どちらさまですか?」と
「私はあなたの娘です」という言葉が
喉元までせり上がってくるのをこらえ
「通りすがりの者です」と
私は優しい嘘つきになる
「通りすがりの私」は笑顔を作り
母へひとつだけプレゼントを贈る
わすれなぐさの押し花がついた
小さい長方形のしおり
母はそれを手にとってあどけなく笑い
「あら ありがとう」と喜んでいる
そしてふと我に返って私の顔をしげしげと見つめ
「ところであなたはどちらさま?」と問う
私は本名を口にするのをぐっと我慢して
さらりと言うのだ
「通りすがりの者です」と
すると母はきょとんとして
再びしおりに目を向ける
「……あの子はどこにいったのかしら」
そう呟く母の存在が
こんなに近いのに果てしなく遠い
 
母から流れ落ちていく記憶の濁流
その濁流にのまれながらも
私は一枚のしおりを作った
 
ただひとつだけの想いをこめて
母に贈りたいこの花言葉
届かぬものと分かっていながらも
母に伝えたいこの花言葉
 
――私を忘れないで