白昼夢
「白昼夢」(2012~2018年あたり作)
実験用のマウスを
たくさんのたくさんのマウスを使い
科学者たちは
確信するのだ
「死とはただの無である」と
「『死とはただの無である』なんて
わかりきっていたことじゃないか」
特定の宗教を持たぬ者は
物知り顔でそう呟く
それでも頭のすみっこで
死後の世界を思い描くときがある
神というものがあるのなら
すがりつきたくなるときもある
実験で死んだマウスたちの中には
一匹くらい変わりものがいるかもしれない
私たち人間が想像するような
「あの世」へと旅立ったものも
いるかもしれない
生きとし生けるものは必ず
いつしか息絶えるときがくる
たとえ「あの世」が存在しなくても
「あの世」を夢見てもいいじゃないか
幾千万のマウスを使って
科学者たちが正論をのべても
「あの世」を夢見てもいいじゃないか
「あの世」でしか会えない人と
まためぐりあいたいのだから
「あの世」でしか言えない言葉を
抱えたままで歩き続けてきたのだから
「あの世」を夢見てもいいじゃないか
「死とは無である」を
くりかえす科学者をしりめに
私は今日も青空をあおぐ
空のむこうで
あの人は私を見下ろし微笑んでいる
そんな甘い白昼夢のおかげで
今私はこの世界で生きている
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