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私が今まで書いてきた詩を掲載しています。 無いとは思いますが、無断転載(盗作)、複製等は禁止です。 閲覧者様の暇つぶしになれたら幸いです。

地球人

「地球人」
(2023年7月5日作)

海は空の鏡っていうから
この満天の星も
きっと海がうつしている
広い広い水面の上に
どれだけの数の星が
またたいているのだろう
そして
ほがらかな月の光を受けて
砂浜の貝殻たちも
星のように輝いている

こうして
波の音にゆられながら
大の字で砂浜に寝ていると
胎児の頃に戻ったみたいだ
鼓動の音と波の音が
重なり合って ひとつになって
命の音が
たまらなくいとおしい

広い広い宇宙の中で
一人の生命体として
地球で生きていることが
果てしない神秘に満ちている
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月光

「月光」
(2023年6月19日作)

ぱちん ぱちん
両手の指の爪を切る
夜更けに爪を切っていると
昔言われたことを思い出す

「夜中に爪を切ってしまったら
 親の死に目に会えなくなるよ」

両親を亡くした今の私には
もう関係のない言葉なのに
夜に爪を切るときは
決まってその言葉を思い出す

ぱちん ぱちん
両足の指の爪を切る
爪切りからこぼれ出た爪の破片が
ぽろりと床にこぼれ落ちる
薄汚れた三日月のように
爪の破片が鈍く光っている

私は部屋の窓を開けて
真っ暗な空の中から月を探す
今夜はちょうど満月で
父母の死に顔のように青白かった
私は急いで窓とカーテンを閉め
爪を切る作業に戻る

ぱちん ぱちん
爪を切る
深爪になりそうなくらい爪を切る
静寂に満ちたこの部屋の中で
爪を切る音だけが
ぱちん ぱちん
と 響いている

日常生活

「日常生活」
(2023年6月15日作)

人は消える
いともたやすく

風でついえるともしびのように
水面ではじけるうたかたのように
花弁を散り落とす花のように
海水に飲みこまれる砂の城のように

人は消える
こんな簡単に

これほどまでに危なっかしい命が
いまだ続いているという奇跡

これほどまでに儚い命が
当たり前のような顔をして生きている奇跡

「いってきます」
と、言って玄関から出て行った人が
「ただいま」
と、言ってまたこの家に帰って来ること
その日常が
かけがえのないその日常が
ただ ただ 愛おしくてたまらない

イバラの教室

「イバラの教室」
(2022年10月11日作)

話題のアイドルの話とか
今、流行りのスイーツの話とか
そんな当たり障りのない会話をして
私たちは均衡を保っている

「個性を大切にしなさい」
と、先生たちは言うけどさ
実際個性を出してしまえば
皆からハブられたり
イジメられたりするんだよ
だからこの無個性な制服のように
皆は協調性ばかりを重んじている

「自由にやりなさい」
と、先生たちは言うけどさ
こんな密閉された教室の中で
そんなことが許されると思う?
出る杭は打たれるし
奇異の眼差しを向けられる
自由は学校じゃ最大の禁忌だよ

こんなイバラだらけの教室で
今日も血を流しながら
決められた席に座っているよ
誰かが
誰もが
誰もかれもが

遠い町

「遠い町」
(2023年1月20日作)

遠い遠い町がある
私が行きたい町がある

それは黄金色の麦の穂がゆれる
青空の下のあの小道

それはひばりのさえずりが
絶え間なく続く広い草原

それは町を離れるときの
めまいのするようなキンモクセイの香り

田んぼや畑しかなかったようなあの町も
今じゃすっかりおしゃれになって
大きなショッピングモールやマンションが
次から次に建てられた

私が行きたいのは あの町
遠い昔すごしてきた町
今はもうない小さな町

ああ
あの町へ帰りたい
ああ
あの町へ帰れない

私の記憶だけにある あの町
今はもうない 遠いあの町