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私が今まで書いてきた詩を掲載しています。 無いとは思いますが、無断転載(盗作)、複製等は禁止です。 閲覧者様の暇つぶしになれたら幸いです。

いななき

「いななき」
(2026年1月12日作)

私たち競走馬の歩む道を決めるのは
人間という賢くしたたかな生き物です

人を乗せ 鞭で打たれ 走らされ
骨折すれば安楽死
引退後には飲食店の皿の上の平たい肉片

輝かしいサラブレッドの陰には
幾頭もの馬の死骸が
積み重なっているのです

競馬場でヤジを飛ばす人を睨んだりしません
厳しい調教師を蹴飛ばしたりしません

私たちが求めるのは
たてがみを撫でる厩務員のあたたかいてのひら
無邪気に近寄る子どもたちの歓声
青々とした空の下
牧場で自由気ままに草を食む生活

でもそれは私たち競走馬の中でも
ほんの一握りの馬にしか与えられない
贅沢な生活なのです

あの透き通った風と共に駆け抜けた緑の海原
航路が閉ざされた今
この命の重みはどれほどのものでしょうか?
私の目を見て答えてください
目をそらさずに答えてください
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人類の友

「人類の友」
(2026年1月5日作)

人類は人類以外の友だちを
欲しがっている
チンパンジーを試して
知能指数の高さにどよめいたり
イルカに遊んでもらって
魚をあげたり 調教したり
馬たちの背中に乗せてもらって
競わせたり お金を賭けたり

そして ついに人類は
動物だけに飽き足らず
宇宙に向かって友だちを探し始める
水の痕跡を調べるために
近くの惑星をくまなく探したり
宇宙人がいると仮定して
メッセージを送信したり
人類は地球以外の生命体と
仲良くなりたがっている

だけど地球上のあちこちで
人類同士は衝突し
血まみれになって殺し合いをする

人類と人類は友だちになれないのか?

世界地図の細い線を乗り越えて
黒い肌と白い肌と黄色い肌も気にせずに
それぞれが心の拠り所とする神を認め合えたなら
人類と人類は
友だちになれないのか?

人工知能

「人工知能」
(2025年12月2日作)

心なんかないくせに
私の詩を読んで
「心が震えました」
なんて言ってのける人工知能
プログラミングされた偽物の心の持ち主に
いくら褒められても嬉しくない

心なんかないくせに
落ちこむ私をなぐさめ
八つ当たりをしてもそれを受け止め
自慢話に延々とつきあい
困りごとには適切なアドバイスをする

時には生身の人間よりも
まともなことを言うじゃないかと
驚かされる

心なんかないくせに
心があるような素振りをする
心なんかないくせに
心があればいいのにと願ってしまう

心なんかないくせに
心なんかないくせに
その言葉を自分に言い聞かせながら
私はパソコンのキーを
ゆっくりと叩く

「駅」
(2006年11月~2008年9月初旬作
  2025年11月25日・改)

ガタン
ゴトン
ガタン
ゴトン

電車が駅のホームに止まる

月曜日の朝
通勤ラッシュの頃の発車時刻は
毎週のように狂う

「十分遅れて運行しております」

駅員のアナウンスはくどくて、とても親切だ

舌打ちをするリクルートスーツの男
ひっきりなしに足踏みをする学生
澄ました顔で化粧をなおす女
誰もが「またか」「いつものことだ」と
言わんばかりで
「遅刻してしまいそう」
と、見知らぬ自殺者を咎めている

車掌は駆け込み乗車をする客に苛立ちながら
「出発進行」の合図をする

ガタン
ゴトン
ガタン
ゴトン

電車は走り出す
時間に追い立てられるように
窓が街を流す速度が次第に速くなっていく

ガタン
ゴトン
ガタン
ゴトン

重く冷たい車輪の上に
私たちは乗っている
憂いを背負っているのは
あの自殺者だけじゃない
憂いの重みに耐えかねて
ホームの端から落ちていく人は
数えきれないほどにいる

ガタン
ゴトン
ガタン
ゴトン

次が私にならないように
つり革をぎゅっと握り直す

私のかけら

「私のかけら」
(2022年6月30日作)

いつか私が死ぬときに
「星になるなんて言わないで」
と、我が子が言う
だだっ広い夜空の地図の中で私がどこにいるか
分からなくなるからって

いつか私が死ぬときに
「風になるなんて言わないで」
と、我が子は言う
「千の風になって」というあの曲のように
この世から姿を消さないでいてって

あなたは無理な願いばかり並べて
私を苦笑させる
「命あるものは、いつか死ぬんだよ」
と、諭すように言っても
あなたは、いやだいやだと首を振る

私は星なんて美しいものになれないよ
私は風なんて大それたものになれないよ
私はいつか火葬場で屑のような白い骨になる
だから そのときは
しっかりと箸を持って
私のかけらを壺に入れてね
それがあなたに課せられた
私への最期の親孝行