忍者ブログ

私が今まで書いてきた詩を掲載しています。 無いとは思いますが、無断転載(盗作)、複製等は禁止です。 閲覧者様の暇つぶしになれたら幸いです。

空色の瞳

「空色の瞳」
(2020年10月1日作)

食卓の皿をふちどるミニトマトを見たら
ふと思い出す
あなたが、その野菜をを嫌っていたことを

ショッピングモールの中のアクセサリー屋にいたら
ふと思い出す
あなたがアクアマリンのペンダントを
気に入っていたことを

日常の何気ないひとかけらを
全てあなたに結びつけてしまう

今でもまだ信じられない
今でもまだ馴染むことができない
あなたの欠けた未完成のこの世界

お花見をしたくても
一緒にお弁当を食べる人がいない
お月見をしたくても
一緒にお団子を食べる人がいない
テレビをつけたって
幸せそうなカップルや家族が映れば
息がつまって 胸が痛む

今になってもまだあなたの気配を感じる
風をはらんだカーテンの向こうに
あなたがいるような気がして
インターフォンが鳴れば
ドアの向こうに
あなたがいるような気がして――

空の上に天国があると
昔からみんなが言うものだから
今の私は空ばかり見上げて過ごしている
遠いあなたに少しでも近づきたいから
私の瞳は空の色
流れる涙も
髪の毛の先 爪の先まで
私は空の色に染まっていく
あなたの色に染まっていく
PR

巡りゆく時の中で

「巡りゆく時の中で」
(2020年9月27日作)

広い原っぱだったその土地は
やがて田畑になり
コンクリートで埋め立てられ
家が建ち 店が建ち
車が通り 電車が通った
そして あっという間に
駅ができ ビルが伸び
スクランブル交差点が混じり合った
かつてしんとしていた原っぱは
今や人間であふれる大都会

昨夜病院で老人が息を引き取った
今朝病院で赤子が産声をあげた
原っぱの風景がどんどん変わっていくように
町を歩く人の顔ぶれも
時代と共にどんどん変わっていく
出生届と死亡届
婚姻届と離婚届
市役所の戸籍や住民票も
紙切れ一枚でくるくる変わっていく

町の静かな遊歩道の片隅に
真っ白な綿毛をつけたタンポポが生えていた
かつて黄色の花びらを揺らしていたのに
花も姿形を変えて未来を見据えて凛としている
小さな子どもがタンポポを引きちぎって
綿毛に向かって大きく息を吹きかける
無限のような青空に
小さな綿毛が舞いながら飛ぶ
風にあおられてどこへ行くのだろう
綿毛を吹き飛ばした子どもは
楽し気にきゃっきゃと笑っている
綿毛もいつか花を咲かせる日が来るだろう
あの子どもも大人になって我が子を抱く日が来るだろう

目まぐるしく変化し続ける町の中で
命のバトンが受け渡される音が
今日もあちらこちらから響いてくる

小さな耳が聴く音は

「小さな耳が聴く音は」
(2020年7月14日作)

雨が地面を叩く音
新緑の木の葉がこすれ合う音
閉めきった窓の外でびゅうびゅうと吹く風の音

小さな子どもは
どんな音も初めて聴く音

ビー玉が床の上を転がる音
テーブルに乗る幾つもの皿の音
朝に鳴くスズメと夕方に鳴くカラス

小さな子どもは
どんな詩人にもかなわない
素直な耳を持って音を聴く

小さな子どもが
唯一懐かしむ音は
母の胸で鳴り響くあの鼓動だけ
その音を聴けば
小さな子どもは
いつの間にやらすやすやと
心地良さそうに眠り始める
まるで胎児の頃のように
体を丸め 眠っている

みんなの空

「みんなの空」
(2020年4月7日作)


人々は忙しい
急いで出かける支度をして
通勤・通学のために足早に駅に向かう
空は澄んで透き通っているけれど
朝の空を楽しむのは
どうやらスズメだけらしい
チュンチュン高らかに鳴きながら
大空を羽ばたいていく


幼い子らは帰宅する時間
友だちと帰る道すがら
空に浮かぶ雲に指をさす
「あれはゾウだ」
「あれはキリンだ」
昼の空で遊ぶのは
どうやら子どもだけらしい
飛行機雲が見えた日には
子どもたちはますます目を輝かせる


やわらかなソファに座る老婆
読みかけの本を閉じて
窓から夕暮れの空を眺めている
だいだい色の空に
群れを成してねぐらへ飛んでいくカラス
夕方の空を絵画にするのは
もしかするとこの老婆だけかもしれない
どことなく寂しいけれど
ノスタルジックな一枚の絵


寒空の下 息を吐く少女
かじかんだ両手を胸の前で組み
満天の空を熱心に見つめている
星になった愛しい人を想いながら
石像のように微動だにせず祈り続けている
夜の空に亡き人を思い浮かべるのは
ひょっとしたらこの少女だけかもしれない
流れ星に叶わぬ願いを捧げる人は
この少女や私だけでなく
きっと大勢いるだろう
――あなたも その一人だろうか?

時を止めて

「時を止めて」
(2020年2月18日作)

光よりも速い速度で
流れていく時の中
私は時間を、この手で掴み取り
「今」というこの至福の時を
永久のものにしてしまいたい

熱く抱擁を交わすあなたと私
このぬくみを一生忘れないようにするために
私たちは一枚の絵画になりたい
綺麗な装飾が施された額縁の中
抱き合う二人は二度と離れることはない

時を止めて

過去も未来もいらないから
「今」というこの至福の時を
永久のものにしてしまいたい