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私が今まで書いてきた詩を掲載しています。 無いとは思いますが、無断転載(盗作)、複製等は禁止です。 閲覧者様の暇つぶしになれたら幸いです。

悪夢

「悪夢」(2008年9月~2009年8月頃)

これ以上の幸せはないってくらい
笑って
はしゃいで
浮かれていたの

夢の中で
あなたは生きていた
この世に生きていて
本当は死んでなんかいなかったんだって
あなたとともに笑っていたの
よかった よかった 本当によかった
そしたらこれからもずっと一緒だね
また会えるね お喋りできるね
約束だけで途切れた旅行も
やっと行くことができるんだよね

これ以上の幸せはないってくらい
笑って
はしゃいで
浮かれていたの

夢から醒めて
目を開けて
寝ている部屋の天井を見た
その瞬間が来るまでは
わたしは
笑っていられたの
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たずね人

「たずね人」(2008年9月~2009年8月頃)

どんなきれいな言葉で詩を書き連ねても
あなたは いなくて
いくら声の限りに名を呼んでも
あなたは いなくて
何度あなたが歩いた公園に立ち寄っても
もう あなたは いなくて

透き通った新緑の木立が
光を浴びて輝いているだけなのです
さびついたブランコが
風に揺れて寂しげな音を立てています
子どもたちの甲高い笑い声ばかり
真昼の空に響くのです

石けりでもしましょうか
手遊びでもしましょうか

何をして気を紛らわせたらいいのでしょう
あなたのことを暫し忘れさせてくれるような
そんな暇つぶしがあればいいのに

紅葉

「紅葉」(2008年9月~2009年8月頃)

雨粒をまとった紅葉が
街路の端に落ちていた
マッチ売りの少女が見たともしびのような
小さな紅葉だった

雨に濡れてしまわないように
握りつぶしてしまわないように
そっと手のひらに収め
歩き出す

家に帰ったら
まずリネンのタオルでふいてあげよう
捨て猫をきれいにしてあげるように
葉っぱの先までたんねんに
冷たいしずくをぬぐってあげよう

ひとしきり眺め終えたら
本棚のすみの国語辞典の中に挟もう
押し花のしおりと同じように
紅葉のしおりを作り上げて
私はいつもそれを持ち歩く

手提げ鞄にしのばせた
黄色い文庫本の中
時を止めた秋の夕暮れが
項をめくれば顔を出す

修復

「修復」(2008年9月~2009年8月頃)

ブルースクリーンが表示されて
強制終了されたカラダ
再起動を試みるも
すぐにフリーズ
寝床から起き上がれない

CPU100を超過したまま
パソコンをフル稼働させていれば
そりゃあ落ちますよ と
苦笑いするパソコンの修理屋の店主
私を診る心療内科の医師の表情と同じ

元通り動くようになりますか
と、聞けば
さぁ と気のない返事

バッテリーが消耗しているね
取り替えたら少しはましになるかも

アドバイスに従って
メモリを増設してもらい
バッテリーも新しいものにする

工具でいじりまわされるパソコンに
羨望の眼差しを送る
いいな
機械は単純で
人の心は複雑怪奇
許容量の拡張も
精神力の向上も
ものの五分で完了できるものではない

はい 終わったよ

修理代を支払う段階で思わず保険証を出しそうになる

壊れているものは
まだここにある
治したいものは
まだここにある

元通り動くようになりますか
私は医師の目を通し
自分の中に問いかける
さぁ と力のない返事

ためらいがちに人差し指が
パソコンの電源のボタンを押す
真っ暗な画面がぱっと光を放ち
パソコンは快調に起動し始める
デスクトップの壁紙とアイコンが
無事表示され
安堵の溜息をこぼす

大丈夫
確かな手応え
きっと修復できる

手の中に包みこんだマウスを
カチカチ鳴らし
ゆっくりとダブルクリックをした

まぼろし

「まぼろし」(2023年2月14日作)

小さな船に乗りこんで
青い海の沖のほうへ向かっていく
潮風が、あなたの指先のように私の頬や髪を撫でる
ざらついた白い骨の粉と小さな花束を
船の上から散らしていく

これで本当にさよならだ
あなたとはもうさよならなんだね

ふと空を見上げると
分厚い雲の隙間から
日の光がスポットライトのように海を照らしていた
「天使のはしご」だ

食い入るように、その輝くはしごを見つめた
はしごを元気によじ登るあなたの背中を見た
名を呼べば、一度だけ振り向いて
私にきらめく笑顔をくれた

「天使のはしご」を見られた人は
幸せになれるって誰かが言っていた
そうだ 私は幸せ者だ
あなたと出会えたことこそが
私の人生で最高の幸福だ

私の肩を抱く思い出が、ほんのりとあたたかい
私はもう立っていることすらできなくなって
ただひたすら涙が止まらなかった