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私が今まで書いてきた詩を掲載しています。 無いとは思いますが、無断転載(盗作)、複製等は禁止です。 閲覧者様の暇つぶしになれたら幸いです。

尊き日々

「尊き日々」
(2022年6月8日作)

いつまで続くだろう
この日常
自宅の玄関の前に立てば
芳しい焼き魚の匂いがする
玄関のドアを開ければ
「おかえり」と
家族があたたかい笑顔で
出迎えてくれる

いつまで続くだろう
この日常
休日に妻はかりんとうをかじりながら
テレビドラマにはりついている
息子は自作の紙飛行機を飛ばし
自慢げに僕に見せてくる
僕はというとパソコンに繋げたイヤホンで
青春時代によく聴いたフォークソングを流し
思い出に浸っている

大きな怪我も病もない
天災もなければ人災もない
当たり前のように過ごす
奇跡のようなこの日常は
果たしていつまで続くだろう?
がらがらと崩れ落ちないように
僕はこの日常を守りたい
家族を守りたい
平和を守りたい
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海辺での質問

「海辺での質問」
(2022年5月17日作)

生前君はよくこう言っていたね
「生まれ変わるならミジンコになりたい」と
本気なのか 冗談なのか
よく分からない言葉だった

君はとても繊細そうな人間に見えた
些細なことで思い悩み
頬杖をついて
いつも何かしら考えごとをして
ため息をついていた

そうだね
君の来世はミジンコが適しているかもしれない
脳みそが小さいミジンコならば
君は日々思い煩うこともなくなるだろう
僕が知らないだけで
ミジンコはミジンコなりに苦労もあるかもしれないが
人間に生まれ変わるよりはいいだろう

僕は防波堤に立ち、大海原を眺めている
ミジンコになった君を探しに来たけど
海があまりにも広すぎて
さざめく青が目にしみて
君を見つけ出すことができない
――君は今、幸せかい?
ミジンコになった君に
僕はそう問いかけたい

桜へ

「桜へ」
(2022年3月28日作)

春には満開の花を飾り
夏には透きとおった緑に満ちて
秋には枯れ葉で絨毯を作り
冬にはひたすら裸で寒さを耐え忍ぶ

どうしてあなたはそんなことができるの?
どうしてあなたはそんなに頑張れるの?

毎年 毎年
移ろいゆく季節の中で
違った顔を見せるあなた

一年 一年
ちゃくちゃくと老いていくだけで
呼吸することだけで精一杯の私

舞い散る花びらの中で
私は飽きることなく問いかける

どうしてあなたは変わらないでいられるの?
どうしてあなたは強く生きていられるの?

その答えは きっと
枝をしならせる春の風の中に

ひとり

「ひとり」
(2021年10月9日作)

人はひとりで生きて
ひとりで死んでゆくものだから
いつも寂しさが影のようにつきまとう

たくさんの笑顔で満ちあふれたテーマパークにいても
老いも若きも集う賑やかな縁日にいても
心のどこかに寂しさが鎮座する

学校にいても 会社にいても
家にいても 町に出ても

周りの人々を見回して ふと思う
ああ この人も あの人も
いつかは死んでしまうのだと
そして自分もひとりきり
いつかは息を引き取るのだと

枯れ葉舞う道すがら
夕方が早まった空と冷えてきた風
秋の到来がなおさら私を心細くさせる

ひとりは良い
ひとりは気楽だ

かげぼうしを足もとにくっつけたまま
私は自分自身にそう言い聞かせる
キンモクセイの甘ったるい匂いに
ひととき 酔いしれながら

ココア

「ココア」
(2021年8月22日作)

いつもの癖でココアを二人分作った
私以外に飲む人はいないのに
ふたつのコップにココアを注ぐ
ゆげが踊るコップを傾けながら
そういえばあの人は猫舌だったことを
思い出す
あっという間に一杯目のココアを飲み干して
もう一杯のココアに手を伸ばす
ぬるくてちっとも美味しくないくせに
二杯目のココアが胸にしみる

一人で住むには広すぎる部屋
一人で暮らすには多すぎる食器
一人で過ごすには持て余す時間

こげ茶色のココアは
透明のしずくになって私の頬をつたう
寄り添うふたつのコップのように
もう一度あなたのあたたかな背中に
もたれかかりたい
いつか私の目の前にひょっこりと現れて
私を驚かせてほしい
悪ふざけが好きだったあなたなら
そんなことがあっても不思議じゃない
そしてまたその腕で
私をかき抱いて
二度と離さないと誓って
二度と離れないと誓って