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私が今まで書いてきた詩を掲載しています。 無いとは思いますが、無断転載(盗作)、複製等は禁止です。 閲覧者様の暇つぶしになれたら幸いです。

初秋の友

「初秋の友」
(2021年4月20日作)

暖色に染まった並木道
木々を見上げながら
私はゆっくりと歩いていた

すると どこかから
かさこそ かさこそ
音がする

ふと地面に目を落とすと
私の足もとに
赤い木の葉が一枚落ちていた
その葉は丸まった小さな葉で
そよ風ひとつで元気に駆け回る

風は寒くはないものの
秋の香りをほのかにまとっている

ゆっくり ゆっくり 歩く私と
かさこそ かさこそ 私について回る葉っぱ
独りきりの散歩に
思わぬ小さな旅の友が
寄りそってきた

かさこそ かさこそ
葉っぱは幼い子どものように
無邪気に走り続けている

風がほんのり寒くても
散歩のおかげであたたかい
旅の友はどこまで私について来るのやら

――なんなら一緒に帰ろうか?

かさこそ かさこそ
くるくる回る葉っぱを
両手のてのひらに乗せる

物言わぬ新たな友だちに
私はそっと微笑みかけた
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詩と私

「詩と私」
(2021年3月11日作)

詩はいつも風来坊
私はいつも待ちぼうけ

今か今かと待ち構えていると
詩はそっぽを向いて知らんぷり
詩は約束を取り付けず
あるとき突然私の胸の扉を叩く
さぁ寝ようかと布団にもぐれば
詩が乱入して
寝ぼけまなこの私を叩き起こす

まるで聞かん坊のように
私を振り回す詩
嫌気がさして
ペンも紙も放り出したっていいはずなのに
私はどうしてもそれができない

詩はいつだって自由気まま
私の都合などお構いなしだ

それなのに
それだからこそ
私は詩に魅かれてしまう

掴みどころのないその存在は
絶えず私を虜にする

氷結

「氷結」
(2021年1月14日作)

雪の夜はしんしんと冷え
白い雪道に私の足跡だけが
きしんだ音を立てながら残る

「ただいまぁ」と言ったって
「おかえり」の声は今日もない

こたつの電源をつけ
テーブルの上には
スーパーで買ったお惣菜やおにぎりを乗せ
ついでに缶ビールを傾けて飲む
しんと静まり返った空間が嫌で
テレビをつけると
皮肉のように
ランドセルのCMが華やかに流れ出す
私はすぐさまテレビを消して
ゆらゆらと歩いて
四畳半の部屋へ入る
真新しいけど埃を被った学習机
箱にしまい込んだままの新品のランドセル
おもちゃ箱の中で持ち主を失ったリカちゃん人形
この部屋に長居はできない
なにしろ今日は雪の夜だし
北向きのこの部屋は心まで凍てつかせる
逃げるようにこたつの前に座り、ビールを一気に飲み干す

写真立ての中で笑顔を見せるあの子に向かって言う

「リカちゃんが、あんたを探してるよ
 どこに行ったの?って
 リカちゃんも泣いてるよ」

こんな酔っぱらいの言葉を聞いたら
あの子はなんて答えるだろう?

「ママ リカちゃんは人形だから泣かないんだよ」

って、至極当然のことを言ってのけるかもしれない



雪の夜は暖房をつけても
なかなかすぐには暖まらなくて
私はこたつ布団に顔を押し付けて
嗚咽を
涙を
叫び出しそうになる声を
ただひたすらこらえている
どれだけ体が温まっても
私の心は凍りついたまま
ちっとも溶ける気配がない
あの子を失ったあの日からずっと――

空色の瞳

「空色の瞳」
(2020年10月1日作)

食卓の皿をふちどるミニトマトを見たら
ふと思い出す
あなたが、その野菜をを嫌っていたことを

ショッピングモールの中のアクセサリー屋にいたら
ふと思い出す
あなたがアクアマリンのペンダントを
気に入っていたことを

日常の何気ないひとかけらを
全てあなたに結びつけてしまう

今でもまだ信じられない
今でもまだ馴染むことができない
あなたの欠けた未完成のこの世界

お花見をしたくても
一緒にお弁当を食べる人がいない
お月見をしたくても
一緒にお団子を食べる人がいない
テレビをつけたって
幸せそうなカップルや家族が映れば
息がつまって 胸が痛む

今になってもまだあなたの気配を感じる
風をはらんだカーテンの向こうに
あなたがいるような気がして
インターフォンが鳴れば
ドアの向こうに
あなたがいるような気がして――

空の上に天国があると
昔からみんなが言うものだから
今の私は空ばかり見上げて過ごしている
遠いあなたに少しでも近づきたいから
私の瞳は空の色
流れる涙も
髪の毛の先 爪の先まで
私は空の色に染まっていく
あなたの色に染まっていく

巡りゆく時の中で

「巡りゆく時の中で」
(2020年9月27日作)

広い原っぱだったその土地は
やがて田畑になり
コンクリートで埋め立てられ
家が建ち 店が建ち
車が通り 電車が通った
そして あっという間に
駅ができ ビルが伸び
スクランブル交差点が混じり合った
かつてしんとしていた原っぱは
今や人間であふれる大都会

昨夜病院で老人が息を引き取った
今朝病院で赤子が産声をあげた
原っぱの風景がどんどん変わっていくように
町を歩く人の顔ぶれも
時代と共にどんどん変わっていく
出生届と死亡届
婚姻届と離婚届
市役所の戸籍や住民票も
紙切れ一枚でくるくる変わっていく

町の静かな遊歩道の片隅に
真っ白な綿毛をつけたタンポポが生えていた
かつて黄色の花びらを揺らしていたのに
花も姿形を変えて未来を見据えて凛としている
小さな子どもがタンポポを引きちぎって
綿毛に向かって大きく息を吹きかける
無限のような青空に
小さな綿毛が舞いながら飛ぶ
風にあおられてどこへ行くのだろう
綿毛を吹き飛ばした子どもは
楽し気にきゃっきゃと笑っている
綿毛もいつか花を咲かせる日が来るだろう
あの子どもも大人になって我が子を抱く日が来るだろう

目まぐるしく変化し続ける町の中で
命のバトンが受け渡される音が
今日もあちらこちらから響いてくる